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ストーリーサークルによる物語分析 千と千尋の神隠し

サムネイル

アメリカのアニメ、リック・アンド・モーティー (Rick and Morty)の作者である、アメリカ人作家、ダン・ハーモン(Dan Harmon)が提唱している物語構造ツールで、ストーリーサークルというものがあります。

「世の中の面白い物語は、このストーリーサークル的な構造を持っている」という仮説を立てて、物語の構造を分析したいと思います。

ストーリーサークルとはなにか

ストーリーサークルには8つのステップがあります。

秩序とケイオス
1、2そして7、8が日常パート。3、4、5、6が非日常パート。秩序だった日常から始まり、中盤からカオスな状況に突入していく。そして終盤に再び秩序を取り戻していく、という構成。

1.YOU – Establish the patagonist[s]

最初にすべき事は、見るに値すべき主人公を作り上げることです。どういった人物が主人公なのかを確立します。主人公は必ずしも1人というわけではなく、家族だったり、チームの場合もあります。

2.NEED – Something isn’t right

主人公が何を目的に動いているのかの動機づけを行います。どんな物語であれ主人公は目的を持たなければ行動を起こす理由がなくなってしまうからです。例えば人間にはお金や仕事、食事、愛などを欲する本能があります。

3.GO – Crossing the threshold

目的は人に行動を起こさせます。空腹であれば食事を手に入れる。愛に飢えていれば恋人を探しに。必要なものを手に入れるために主人公が行動を始めます。行動を積極的に起こすような活発な主人公や、行動を起こさざるを得ないくらいの目的が求められます。

4.SEARCH – The road  of trials

主人公が目的を達成するために何かを探索します。探しているのは物理的なものだけではありません。そして乗り越えなければならない障害がここで待ち受けていることになります。

5.FIND – Meeting the goddess

主人公は何かを発見します。ここが、主人公が英雄として何かに気づくポイントとなります。しかし良い物語においては、ここでは目的は達成されません。 そううまくはいかないものです。本当に必要だったものかもしれないけども、何か別のさらに重要なものが必要になることが判明するかもしれません。もしくは自分の弱点に気づいたのかもしれません。

6.TAKE – Paying the price

ここで主人公は目的を達成します。金を手に入れて食事にありつけたり、恋人と会えるかもしれません。

7.RETURN- Bring it home

主人公は日常を取り戻し、あるべき場所、あるべき姿へと帰路に着きます。

8.CHANGE – Master of both world

様々な変化があります。主人公が変わる場合もあれば、周りの世界が変わることもあります。映画や長編作品の場合であれば両方でしょう。その変化によって世界は良い方向に変わったけども、主人公は最悪の方向に変わることもあります。主人公が何らかの代償を払ったことによって痛みを伴う変化を強いられる場合もあります。でもそれが良い物語を作る肝になります。

おとぎ話を例にした一番シンプルな物語分析
浦島太郎(You)は、いじめられている亀を助ける(Need)。助けたお礼として亀と一緒に龍宮城に行くことになる(Go)。海の中を進み(Search)、龍宮城を発見する(Find)。龍宮城で乙姫とどんちゃん騒ぎをし、お土産として玉手箱を貰い(Take)地上に戻る(Return)。玉手箱を開けてしまった浦島太郎はおじいさんの姿になる(Change)。

千と千尋の神隠しのストーリーサークル

ウィキペディアに書かれているストーリーを引用しつつ、書いていきます。画像は映画予告から。

注意
これ以降、千と千尋の神隠しのネタバレあり。

1. YOU

10歳の少女・千尋(ちひろ)は、両親と共に引越し先へと向かう途中、森の中の奇妙なトンネルから通じる無人の街へ迷い込む。そこは、怪物のような姿の八百万の神々が住む世界で、人間が来てはならないところだった。

千尋の両親は飲食店で神々に出す食べ物に勝手に手を付けたため、罰として豚にされてしまう。千尋も帰り道を失って消滅しそうになるが、この世界に住む少年ハクに助けられる。

小学生の女の子、千尋が主人公。ありふれた日常からスタートします。森の中のトンネルが現し世と神の世界を繋ぐ通路となっていました。
日本人の伝統的な宗教観では、人間界と神の世界はどこか地続きのようなイメージで捉えられていると思います。昔、日本書紀を読んだ時にもそう感じました。ひょんなことから繋がってしまう近さといいますか。
また日本の神様って神様のくせに、ものすごく人間臭いんですよね。そのへんが欧米や中東圏の唯一神とは違うなぁと思ってます。多神教の特徴なのかな?

2. NEED

ハクは、八百万の神々が客として集う「油屋」という名の湯屋で働いていた。油屋の主人は、相手の名を奪って支配する、恐ろしい魔女の湯婆婆(ゆばーば)である。仕事を持たない者は動物に変えられてしまうとハクは千尋に教える。千尋は、雇ってくれるよう湯婆婆に頼み込み、名を奪われて「千(せん)」と新たに名付けられ、油屋で働くことになる。
ハクは、本当の名前を忘れると元の世界に戻れなくなると忠告する。ハクもまた名を奪われ、自分が何者であったのかを思い出せずにいた。しかし、彼はなぜか千尋を知っており、千尋のことを覚えているのだという。一方、千尋には、ハクの正体に心当たりがない。
豚にされた両親を助けるため、油屋で働き始めた千尋・・・
湯婆婆との会話で、千尋の両親は神に捧げる食事を食べてしまったことが原因で豚にされたことが判明します。この物語における千尋の目的は両親を助けて元の世界に戻ることとなります。そのためには動物にされないように湯屋で働く必要性が生まれました。そしてハクは千尋のことを知っているけども千尋はハクのことは分からない、という物語における1つの伏線がここで張られています。
また、ハクの目的も自分の本当の名前を取り戻し元の世界に戻りたい、というのが暗に理解できます。

3. GO

彼女は人間であるために油屋の者たちから疎まれ、強烈な異臭を放つ客の相手まで押し付けられる。しかし彼女の実直な働きにより、客から大量の砂金が店にもたらされると、千尋は皆から一目置かれる存在になる。千尋はその客から不思議な団子を受け取る。

翌日、ハクは湯婆婆の言いつけにより、彼女と対立している双子の姉の銭婆(ぜにーば)から、魔女の契約印を盗みだす。しかし、銭婆はハクを追ってきて魔法で重傷を負わせ、湯婆婆の息子である坊(ぼう)もネズミに変えてしまう。千尋はハクに不思議な団子を飲ませて助けるが、ハクは衰弱してしまう。
そのころ油屋では、カオナシという化け物が従業員を飲み込んで暴れていた。カオナシは千尋から親切にされたことがあり、金や食べ物で千尋の気を引こうとするが、彼女が興味を示さないので激怒する。千尋は不思議な団子をカオナシに飲ませて従業員を吐き出させ、感謝される。
ここから千尋の湯屋での奮闘が始まります。この作品における見せ場がここで、多くの時間がこのシーケンスに割かれていました。主な盛り上がりポイントは3つです。
  • ヘドロを垂れ流しながらやってきたオクサレ様の身体から千尋がゴミを取り出してあげるシーン
  • 龍の姿になったハクが銭婆の式紙に追われ傷つくシーン
  • カオナシが暴れるシーン
オクサレ様登場からカオナシ暴走まで息をつく暇もない感じで次々と困難が千尋に降りかかります。
しばらくロックな感じで慌ただしいシーンが続きますが、湯婆婆が”ゆばはめ波”を放って荒ぶるカオナシにぶつけてゲロ吐かせる辺りから落ち着いて来て次のシーケンスへの滞りない橋渡しがされております。
面白いのが湯婆婆がかめはめ波を放つシーンの絵コンテだか指示書に「ドラゴンボールみたいに」って本当に書かれてることです。

4. SEARCH

千尋はハクを助けたい一心で、危険を顧みず銭婆のところへ謝りに行くことを決意する。

一方、意識を取り戻したハクは、坊が銭婆のところへ行ってしまうことを湯婆婆に伝える。ハクは、坊を連れ戻してくることを条件に、千尋と両親を解放するよう約束を迫り、帰る手段のなかった千尋を迎えに行く。
千尋は銭場の住む家へ向かう為、列車での旅を開始します。前段の騒がしいシーケンスから一変して静かな、落ち着いた場面が続きます。透明な乗客や見慣れない風景のおかげで、やっぱりここは普通の世界ではないんだなというのが分かりますね。

5. FIND

千尋は、カオナシとネズミになった坊を伴って銭婆の家を訪れる。銭婆は千尋を穏やかに受け入れる。

ハクは銭婆から許され、千尋と共に油屋へ帰る。

千尋は銭婆の家を発見。ハクの代わりに銭婆に謝罪をします。千尋はハクの安否を気にして落ち込んでいましたが、ハクもまた千尋の元へ辿り着き、ハクの元気な姿を見て安心します。

銭婆は湯婆婆とは違って穏やかな性格でした。意外性。これがもし激しい性格で一波乱あったらまた騒がしいシーケンスになっていたと思います。しかし既にGOの段階で3つも騒がしいシーンを持ってきていることと、終盤の盛り上がりを考慮してSEARCH、FINDの段階では静かなシーケンスに設計しているのだと推察出来ます。

6. TAKE

その途中で、千尋は自分が幼いころに落ちた「川」がハクの正体であることに気づく。幼いころハクの中で溺れそうになったとき、ハクは千尋を浅瀬に運び、助けてあげた。千尋がハクの名前に気づくと、ハクも自分の名前を取り戻す。

これまでにも所々で記憶の断片が見えていましたが、ここで千尋がついにハクの正体に気が付きます。一度覚えたもんは忘れないもんさ、という銭婆の言う通り、2人の因縁が明らかになったシーケンスですね。これで勝つるってやつです。
ハクの真名を知って千尋は「神様みたい!」って言ってたけど、よく10歳やそこらで神様らしい名前だと気づいたな、と見ててちょっと思いました。野暮なツッコミをすると、たぶん現代の都会っ子は「ニギハヤミコハクヌシ」って聞いても神様だとは気づかないんじゃないかな?
こういうのって高齢クリエイターにありがちで、むかし母親が見てた「渡る世間は鬼ばかり」を何気なく見てたら、青年えなりかずきが「おむすびをこしらえる」ってセリフを言ってたんですよ。いやいや!現代っ子はそんな言い回ししないですよ橋田壽賀子先生ェ!

7. RETURN

油屋に帰ったハクは、千尋と両親を解放するよう湯婆婆に要求する。従業員たちも、今度は千尋の味方である。湯婆婆は、油屋の前に集めた豚の中から両親を言い当てろと難題を課すが、千尋はこの中に両親はいないと正解を言い当てて自由となり、従業員たちに祝福されながら油屋を去る。

湯婆婆との問答に勝利し、千尋の目的であった両親の奪還を達成しました。ハクともう一度会おうと約束し、千尋は元の世界に帰っていきます。

8. CHANGE

人間に戻った両親は、最初のトンネルの前で、なにごともなかったかのように待っていた。もとの世界に戻った千尋が振り返ると、トンネルは来たときとは違う姿に変わっていた。

人間界と神の世界を繋ぐトンネルの姿が変わったことで物語は終焉を迎えます。ひょんなことから神の世界を覗き見てしまった女の子のお話でした。

さいごに

ストーリーサークルというのはあくまでもツールです。文字を知っているからと言って小説家になれるわけではない、名投手の変化球の握り方を知ったからと言って名投手のような変化球を投げられるわけではないのと同じで、ストーリーサークルを知ってこの構造に自分の考えた話を当てはめたところで名作になるわけではない、と思います。

ただ何も知らずにヤマなし落ちなしの物語を作るより、知識として物語の作り方にはこういう方法もあるよというのを知っておいても損ではないでしょう。噂では故高畑勲監督や新海誠監督も独自のツールを持っているらしいですよ。

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